10: ◆eodXldT6W6[saga]
2020/09/06(日) 07:32:36.85 ID:sPru/fk9O
飲み物を買おうとしたとき、果穂は久住が捨てていったドーナツの紙袋に気づいた。
果穂は紙袋を手に取った。袋の中にはドーナツが手付かずのまま残されていた。
悲劇に間に合わなかったヒーローのように果穂は涙を流した。ドーナツを捨てることも、食べることもできそうになかった。かといって、ゴミを出した久住を悪い人と責めることもしたくなかった。その人のやったこととその人自身を安易に同一化せず、分別して考えることを果穂は無意識に実行していた。
果穂は涙で濡れた目元をゴシゴシ拭いた。そして自販機に背を向け、水飲み場へ向かった。蛇口をひねり、吹き上がってきた水をお腹がたぷたぷになるまで飲んだ。
ドーナツの紙袋はまだ抱えていた。この紙袋をどうするべきか、果穂にはまだわからなかった。それでも果穂は、せめて今日一日だけでも、久住が捨てていったこのドーナツの入った紙袋を抱えていこうと心に決めた。
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