7: ◆cHgGoW87TMyQ[sage saga]
2020/08/12(水) 22:31:05.13 ID:oQgLvJpl0
「……私、先に戻るわ」
出来るだけ感情を表に出さないよう努めながら、立ち上がった。
華も、何となく私の心中を察したのだろう。
何も言わず、見送ってくれる。
「ねぇ、葉子」
ただ最後に、どうしても知っておかねばいけない事を、幼馴染は知らせてくれた。
「最終戦で二宮さんを撃墜したの、三雲君らしいよ」
それは、驚愕の―――だが、私にとってはどこか納得のできる―――事実。
アイツと私の差を明確に知るには、避けては通れぬ事実であった。
私と三雲との間に何かがあったのを察して、華は教えてくれたのだろう。
辛い事実と分かっていながら、それでも今一番心に響くタイミングで伝えてくれた。
アイツはB級1位を率いるシューターNo1を撃破し、私は試合の最終盤に立っている事すらできなかった。
これが今の現実だ。
それでも、
「華……。華がボーダーに入るって教えてくれたあの日、どんな話したか覚えてる?」
華は、うんと小さく答えた。
「……私も、覚えてるから」
また、華はうんと答えた。
「私は天才じゃなかったし、私達が組んでも楽勝じゃなかったけど、それでも―――」
振り返り、華の両目を真っ直ぐに見詰めて、想いを吐きだす。
「―――私は、一番を目指してるから」
あの日と同じ決意を、告げる。
幼馴染は、小さく微笑みながら、力強く頷いた。
もう、負けない。
次は絶対に勝って見せる。
留まっていた私達の時間が、今再び流れ出した―――。
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