3: ◆cHgGoW87TMyQ[sage saga]
2020/08/12(水) 22:29:03.74 ID:oQgLvJpl0
◇
始まりは、とある噂だった。
噂自体は大したものじゃない。
尾ひれがつきまくった滑稽とすら言えるもの。
曰く、アタッカー3位の風間さんと引き分けたB級がいるらしい。
曰く、そのB級は前回の大規模侵攻に於いて凄まじい大活躍をしたらしい。
曰く、そのB級は新型ネイバーを多数撃破し、二人のブラックトリガー持ちに狙われて尚も逃げ果せたらしい。
曰く、そのB級はトリオン体を解除してまで、激闘を続けたらしい。
曰く、そのB級は激闘の末に命に係わる怪我をしたらしい。
そのB級の名は―――、
……馬鹿げた話だと思った。
確かにアイツガ風間さんと引き分けたのは事実らしい。
だが、それも頭に24敗というどうしようもないスコアが付いての話。
部隊単位で語るならまだしも、アイツ個人にそれ程の実力はない。
あまつさえ新型ネイバーとブラックトリガー持ち二人から逃げ切るなど、天地がひっくり返っても有り得ない事だ。
ただ、噂の中で一つだけ気を退く内容があった。
『トリオン体を解除してまで、戦いを続けたらしい』。
この行動が、私が調べて来た三雲修という人間と、どこか合致するような気がしたのだ。
あらゆる手段を使って目的を達成する男。
もしアイツにどうしても譲れない目的があったとして、「そうする」ことで目的が達成できるのだとすれば、
アイツは、多分……「そうする」のだろう。
己に降りかかる危険を度外視してでも、己の命を天秤に掛けても―――三雲修という人間ならば。
だけど、私の中の常識は、それを否定したがっていた。
そんな人間有り得ない。
例え成し遂げなければならない目的があったとしても、本当に命を投げ打てる人間などいやしない。
……私は確かめずにはいられなかった。
ただの風の噂でしかないそれが、バカらしいの一言で忘れてしまえば良い筈のそれが、どうしても気になって仕方がなかった。
気付けば、私はある場所へと向かっていた。
ボーダー本部から離れて建つ、玉狛支部。
私はまるで隠れるように、出入口近くの物陰に潜み、アイツを待っていた。
少しして、気の抜けた間抜け面を張り付かせたアイツが出て来た。
幸いな事に、アイツは一人だった。……何が幸いなのかはよく分からないが。
ともかく、アイツは私の前に姿を現した。
声を掛ける。
私を見たアイツは、驚いた表情を浮かべていた。
それもそうだろう。
ランク戦で少し言葉を交わしただけの奴が、出待ちのような事をしていたのだ。
私だって同じ事をされれば驚くし、ヒクだろう。
今になって考えれば馬鹿げた行動だが、そんな事に気付く事もできない程に私の心は『噂の真否』に囚われていた。
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