2: ◆yufVJNsZ3s
2020/08/11(火) 23:22:06.13 ID:AVuudPRF0
「……なにやってるの?」
イクがアイスキャンディを齧りながら部屋の入口に立っていた。あれほどノックをしろと――いや、空けっ放しにしていたのは俺だ。空気の通りをよくするために。
溶けたアイスが液体となってぽた、ぽた、廊下に一滴ずつ染みていく。イクは指に、手首に伝ったそれを舌で舐めとった。なんとも扇情的な光景であったが、幸か不幸か頭は茹っている。下半身は反応しない。
「あちぃ」
「うんうん、わかる。ほんっと、あっついのね」
「茹だるぜぇ」
「熱中症にだけは気を付けてよ?」
「おう、おう」
スチールデスクはひんやりとしていて気持ちがいいものの、すぐに人肌でぬるまってしまう。少しだけ体を動かして、まだ仄かにでもひんやりとした場所を探す。
そんな俺の姿を見て、イクはぼそりと「毒虫みたい」と呟いた。グレゴール・ザムザの名前くらいは知ってはいるが、毒虫そのものにはとんと見識が及ばなかった。
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