高森藍子が一人前の水先案内人を目指すシリーズ【ARIA×モバマス】
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81: ◆jsQIWWnULI
2020/11/29(日) 18:48:16.98 ID:RCe5Jm+v0
「藍子ちゃん。水先案内人が意識しないといけないものの中で、一番忘れがちになってしまうものってなんだと思う?」

アイさんとのやり取りを思い出す。

「忘れがちになってしまうもの、ですか……?」

「うん」

「……時間……ですか?」

「時間管理は重要だけど忘れがちにはならないかなぁ。確かに、藍子ちゃんといるとなぜか時間が吹き飛んでることはあるけれど」

「そうなんですか?」

「そうだよ。藍子ちゃんは可愛いんだから」

「へ?」

「……さ、時間じゃないとすればなんだ、って言うとね。答えはスピードなの」

「スピード」

「正確にはゴンドラを漕ぐ速さ。どうしてスピードが重要かわかる?」

「……いいえ、わからないです」

「何故かって言うとね、ここがネオ・ヴェネツィアだからなの。……藍子ちゃんは、このネオ・ヴェネツィアがどうやってできたかは知ってるよね?」

「はい。ネオ・アドリア海に浮かぶ島の一つだったこの土地に、マンホームのヴェネツィアを移転したことによって、ネオ・ヴェネツィアが誕生した……」

「その通り!ということは、ネオ・ヴェネツィアはヴェネツィアの歴史を歩んできた建造物が多いってことになるよね。そしてその建造物の多くは石造りになってる。当然水路をはさむ建物も」

「はい」

「ここで重要なのは、水路を使って水面を移動するにはどうしたって振動を発生させてしまうということ。つまり、波が発生してしまうということなの」

「波、ですか」

「そう。この波ってやつがなかなかの曲者で、アーニャ風に言えば『水滴岩をも穿つ』なわけよ。要するに波が石造りの建物をどんどん削っちゃうんだ。けど、さっきも言った通り、船で移動すると波が起こる。だからこのネオ・ヴェネツィアでは、原則として大きな波を立てないスピードで運転をするようになっているの。これから先のネオ・ヴェネツィアを守っていくために」

「なるほど……将来のネオ・ヴェネツィアを守るため……」

「だから、水先案内人には一定のスピードを保ちながらゴンドラを運転する技術が求められるの。だけど、意外とみんなスピードのことは忘れがちになっちゃうんだよねぇ……。逆漕ぎ女王もいるしね」

アイさんはそう言うと、ニカッと笑った。


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