710: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/29(火) 21:33:13.36 ID:Dh94pGk20
私がこの世に「生まれ落ちた」のは、1年前だ。
女神の樹の下にいた私を拾ったのは、ユングヴィ教団の老司教、オフィーリア・アーヴィングだった。
彼女は統治府での執務の帰りに、たまたま私を見つけたのだ。
『あなたを守らないと』
開口一番、彼女は言った。
『どうしてですか』
『あなたが『女神の樹の巫女』だから。あなたの存在を知ったら、利用したり、殺そうとしたりする人がすぐに現れる』
私は驚いた。私の中にある「樹の記憶」から、利用されたりすることがあるだろうことは知っていた。そして、「私の娘」が犯してしまったことから、危険視する人がいるだろうことも理解していた。
でも、私を見てすぐに「女神の樹の巫女」だと彼女が理解したのは、さすがに予想外だった。傍から見たら、裸で横たわっている変な女にしか見えないはずだ。
『なぜ分かったのですか』
『無駄にこの街で70年以上生きているわけじゃないのよ。それに『女神の樹』については、こちらでも色々調べているの。
上に話をするととても面倒なことになりそうだから、私のところで止めているのだけどね』
『……なぜ、私を助けようと』
『過去の『巫女』の末路は知っているわ。その誰もが、不幸せな結末になった。
最初の巫女は悲恋の結果ここに根を生やし、2人目は慰み者となった挙句に命と引き換えにこの街を作った。そして3人目になってやっと子を成すことができたけど、その子は惨劇を引き起こしてしまった。
あなたの意識がどれなのか……あるいはその全てなのかは分からない。でも、私はあなたに『普通の女性』として生きてもらいたいの』
『え』
『それが神の教えだから。私の個人的な想いもあるけど、それはまたいつか、ね。ついてらっしゃい、とりあえずその恰好を何とかしないといけないわ』
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