魔王と魔法使いと失われた記憶
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640: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/08(火) 22:01:31.89 ID:NFy1JhCKO


「え」


彼女の前に、黒い歪みができた。木の葉がそこに吸い込まれていく!?


「どきなっ!!!」


プルミエールを突き飛ばす。右足が、何処かに吸い込まれていく感覚がした。その先は……とてつもなく冷たい。


「ぐうっっっっ!!?」

「デボラさんっ!!」

プルミエールが、歪みの中に魔弾を放つ。「コォォォオオ…………」という魔獣か何かの叫びが聞こえると、吸い込む力が急に弱まった。
右足を引き抜く。氷の欠片が、ビッシリとついている。恐らくあのまま放っておいたら、あたしは吸い込まれて魔獣の餌食になっていたわけか。
仮に魔獣を倒せたとしても、酷寒で死ぬ。……いい神経してるじゃないか。

チッ、とアヴァロンが舌打ちをした。

「余計な真似をしますね……貴女、お会いしたことは?」

「ないね。だけど、初対面だけどあんたから胸糞の悪さしか感じないね」

「邪教徒が良く言います……ああ、なるほど。そういうことですか」

ククク、と愉快そうにアヴァロンが嗤う。酷く不快だ。

「何がおかしい」

「いえ……既視感の正体が分かったので。なるほど、オーバーバックが貴女たちを……いや、貴女を見逃したわけだ」

「……?」

「判断の早さと洞察力は父譲り、見た目は母譲り、ですか。なるほど、貴女も生かしておくと厄介になりそうだ」

何を言っている?父さんと母さんのことを、アヴァロンがなぜ知っている?

嫌な想像が、頭に浮かんだ。血が沸騰しそうに沸き立つ。


「オーバーバックが父さんと母さんを……リオネル・スナイダとパメラ・スナイダを殺したのは……あんたも噛んでるね」


アヴァロンの笑みが深くなる。


「彼の元にお二人を『案内』しただけですよ」




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