魔王と魔法使いと失われた記憶
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637: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/12/08(火) 21:58:37.50 ID:NFy1JhCKO
「思っていたよりは寄越したものだねえ」

目の前には重装備のテルモン兵が7人。小隊長と思われる男が、兜を片手にあたしとシェイドの所に来た。
年齢は40ぐらいか。無精髭で武骨な印象を与える。場数はそれなりに潜っているようだ。

「カルツ・ヴェルナーだ。シュヴァルツ第4皇子の命でこちらに参上した」

「ああ、よろしく頼むよ。にしても、思ったよりちゃんとした援軍で驚いたね」

「皇子の命だからな。モリブスとはあまりいい関係ではないが、テルモンがモリブスを攻撃したという風説が流布されれば国益に関わる。
何より、昨日の殺戮。こちらも6人が死んだ。ユングヴィには適切な回答を求めたいものだが」

「なるほどにゃ、ロックモール制圧はユングヴィの意向が強いということにゃ?」

「と聞いている。彼らからの要請を受け、皇帝陛下が我々を送ることを決断された。
まあ、陛下の御心は分からないが、シュヴァルツ皇子はそもそも乗り気ではないよ」

「だろうねえ」

もしテルモンが本気でロックモールを制圧しようというなら、皇子は娼館に通わないだろう。
利権拡大を狙ったテルモンが、アヴァロンの誘いに乗ったというのが妥当な読みか。

問題はアヴァロンだ。あいつはメディアを奪うためなら手段を選ばない。
さらに、エリックが言っていた「救済」の言葉も気になる。ユングヴィ教に背くとして、この街そのものを破壊しつくそうとしている可能性すらある。

シュヴァルツ皇子の説得には、この仮説が効いた面もあった。あたしたちにとっても、そしてテルモンにとっても、アヴァロンは敵なのだ。だから、この男たちを寄越したのだろう。

「街中の警備はどうなってるにゃ」

「万全だ。しばらく戒厳令を敷くということにはなってい……」


あたしの視線の向こう。防風林に隠れる形で、何人かの人影が見えた。
そしてそこから放たれたのは……緑色の「枝の槍」。


「伏せなッッ!!!!」


ザクッッ!!!!


「グハッ!!?」


血飛沫が、あたしの頬にかかった。数十メド先から放たれた「槍」の何本かが、反応が遅れたテルモン兵の胸を貫いたのだ。
やられたのは、3人か。さすがに隊長のヴェルナーは避けている。

「なっ!?」

「家の中に逃げなっ!!あたしたちが対処するっ!!」

「しかし……」

「しかしもクソもないよ!!死にたいのかいっ!?」

ヴェルナーが家に向かって駆け出すのと同時に、防風林から、5人の人影が現われた。アヴァロンとエストラーダ侯、そしてあとの3人は教団の兵士か。

「愚かな……あの皇子は、神に逆らう選択をしたようですね」

「……どこの神様かねえ」

あたしは銃を構える。杖を構えたアヴァロンが、一瞬光ったように見えた。

「来るよ!!!」

あたしとシェイドも、家の方に走る。それから程なくして、何者かが近くに現れる気配があった。


シャアアアアッッ!!!


「枝の触手」が、あたしたちに襲い掛かる。来やがったね!!




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