578: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/25(水) 23:22:44.56 ID:dbHTZ14LO
オーバーバック?いや、あいつとは違う。この気配は……魔物にむしろ近い。
ボクは周囲を見渡し、まず化粧室に入った。爆弾を置くと、猫に姿を変えその窓の隙間から外に出る。
気配がしたのは、東側の方だ。こちらは西側だから、ちょうど逆。見に行きたいという欲求はあったけど、本能がそれを押し留めた。
それに構わず、4階のバルコニーへと駆け上がる。
果たして、そこにはメディアがいた。
その手には、前に来た時にはなかった緑色の大きな宝石が握られている。
カリカリと窓をひっかく。彼女がわずかな驚きとともに、ボクを迎え入れた。
「……あなたは」
「君を迎えに来たにゃ、カルロスが待ってるにゃ」
「……!!カルロスが……」
「ここはもうすぐ火事になるにゃ。その前に逃げるにゃ」
「……私は、ここで死ぬべき定め。ここに残るわ」
ボクの中に、迷いが生じた。ユリウスの言っていたことが本当なら、世界にとって彼女は確かに生きてはいけない存在なのかもしれない。
ただ、子をなさなければ大丈夫だとすれば……
「それは本心かにゃ?」
「……」
禍々しい気配は、さらに強まっている。これ以上ここに残るのは危険だと、獣としての本能が訴えかけていた。
「もしここで死にたいならそれはそれでいいにゃ。でも、君が少しでも生きたいと願うなら、ボクと一緒に逃げるにゃ」
ボクは宙返りをして、再びヒトの姿に戻った。幻影魔法の効果は切れているけど、この際それはどうでもいい。
ゾグンッ
下から、誰か来る気配がする。1人……いや2人??
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