魔王と魔法使いと失われた記憶
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543: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/16(月) 20:27:23.04 ID:6z/X/rfuO
私は溜め息をついてドアを開ける。果たして、その男は階段を塞ぐように立っていた。

「……オーバーバックさんですか。今までどこに」

「お前の言う通りの『鼠狩り』さぁ」

「仕事はしているのでしょうね」

ニヤリと彼が嗤った。

「それだがなぁ……2ついい知らせがあるぜぇ。まず、お前が追っていた『魔王エリック』と、昨晩会ったぜぇ」

「何ですって!!?」

やっと来たか!ロックモールを通らずに皇都に着くのはかなり難しい。険しい山を越えねばならない上、補給もままならない。
女連れならば、確実にここを通るはずだと踏んでいたが……

そして、オーバーバックが魔王と会ったということは。

「始末はしたんでしょうね」

「いやぁ。少し遊んでそれきりだぁ。せっかくだから、長く遊び相手になってほしいからなぁ」

「……舐めているのですか」

激しい落胆と怒りが沸いてきた。世界を災厄から遠ざける機会をおめおめと逃すとは!

オーバーバックを睨み付けると、彼はその笑みを深くした。

「舐めてねえぜぇ?そもそも、俺とお前の関係は何だぁ?上司と部下かぁ?
違うなぁ、ただの契約関係だぁ。そしてそこには、『エリック・ベナビデスを消す』は入ってねぇ……」

「それでも六連星の一員か」という言葉が出かかって、私はそれを必死で抑えた。

確かにオーバーバックは六連星だ。しかし、その意思は誰にも縛れない。たとえ、アルベルト王でも。あるいはハンプトン卿でも。
彼の力は、あまりに強大だ。六連星に入れたのは、この男が危険すぎるから味方に引き入れたという理由以上のものはない。

そして、他の六連星と違い……この男には、世界を守ろうとする意思は全くない。
ただ、好きな時に飲み、好きな時に博打を打ち、好きな時に女を買う。その意思を縛るには、あまりにこの男は強大なのだ。

「分かってるなぁ、大司教さまぁ……俺にとっては、『記憶』がどうだとか関係ねぇんだよぉ……ヒリヒリするような勝負ができればそれでいぃ……。
せっかくだからもう一つ教えてやるよぉ。多分だが、カルロスってガキと魔王は組んでるぜぇ」

「……本当ですか??」

「ああ、恐らくなぁ。だが、俺はこれ以上タッチしねぇぜぇ?『狩り(ハント)』以外に、今の俺の興味はねえからよぉ」

何という僥倖!!世の災厄を、2つ同時に取り除ける好機が舞い降りるとは!!
やはり、神は私を愛しておられる。何と素晴らしき日か。

「……ええ、いいでしょう。好きになさい」

「ククク……じゃあ、俺は消えるぜぇ」

トントントン、とオーバーバックが階段を降りる。私はエストラーダ候に向けて振り返った。


「貴方に、向かってほしい所があります」





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