521: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/13(金) 20:53:00.08 ID:IYt6kOGhO
デボラさんの言葉をシェイド君が遮る。
「え?」
「オーバーバックの言っていたのが本当なら、それは多分全ての体液が含まれるにゃ。
唾液も、汗も、愛液も……薬なら、進んで飲ませたがるはずにゃ。でも、メディアのやっていたのは逆にゃ」
「薬じゃないってこと?」
「断言はできないにゃ。ただ、それがアヴァロンの目当てなのは間違いないにゃ。そして……」
「エストラーダ候がここにいる理由も合点が行く。アヴァロンは、ファリスの薬が手に入ると言ってここに彼を連れてきた。
ただ、ファリスが死んだのはアヴァロンなら知っているはずだ。つまり、エストラーダは騙されていることになる」
「どうしてそんなことを……」
エリックが首を振った。
「分からん。明日、また情報を集めに出るしかないな。しかし、どうすれば……」
「あたしがやるよ」
デボラさんが手を挙げた。
「えっ……!?」
「ここには護衛依頼で何回か来てるからね。シェイドの具合も落ち着いたし、あたしが出た方が具合がいい。まあ、変装ぐらいはした方がいいけどね」
「ボクも行くにゃ」
「シェイド君!?」
「オーバーバックの気配は、何となく分かったにゃ。次は撃たれないにゃ。
デボラお姉様が撃たれるようなことがあったら大変にゃ」
デボラさんがふうと息をついた。
「……まあ、仕方ないねえ。……で、オーバーバックという奴は、何者だったんだい」
「……分からん。色々謎だらけだが……一つだけ言えるのは、あいつは只者じゃない」
苦虫を噛み潰したようにエリックが言う。こんなに悔しそうな彼は初めて見たかもしれない。
「どういうこと?」
「……俺は、『一度も』勝てなかった。一度だけ、お情けで勝たせてもらっただけだ。
後は、全部あいつの掌の上だった。いい手が入ってもそれ以上の手で潰される。ブラフをかけても見透かされる。
『テキ・ポルカ』であんなに負けたのは……ジャック相手にだってない。イカサマもしていないようだった……あまりに、現実離れした強さだった……」
「……そんなに強かったのかい」
「ああ。理不尽なほどに」
ふうむ、とデボラさんが手を顎の辺りにやった。
「……あんたが『テキ・ポルカ』で強いのはよく知ってるよ。あたし含めて、うちのもんじゃ誰も勝てなかった。ジャック先生ほどじゃないけどね。
そのあんたがそこまで言うのは、確かに只事じゃないねえ」
「奴はあれを違う名前で呼んでいた。『テキサス・ホールデム』と。デボラ、聞いたことは?」
「ないねえ。……シェイド、あんたは?」
「……御主人なら知ってるかもにゃ。でも、それは置いとくにゃ。
とりあえず、外見の特徴だけ教えてくれにゃ。見たらすぐ逃げるにゃ」
「ああ。……服は普通の服だった。盗賊が着ているような、薄茶の上下だ。髪は黒く、短い。そして……黒い眼鏡をかけていた。その下の目は白だ」
シェイド君が訝しげに首を捻る。
「白目?盲人かにゃ?」
「いや、完璧に見えていたようだった。ただ、黒い眼鏡も白目もかなり目立つ。それは確かだ」
「にしても、なぜあなたに危害を加えなかったのかしら」
「……アヴァロンには雇われていると言ってた。もちろん、俺のことも知っていた。だが、俺を殺すことには興味がないらしい。完全に他人事だったな」
色々妙な人らしい。シェイド君を撃ったけど、殺そうとしたわけでもないみたいだ。悪い人ではないのかな。
「……まあ、考えても仕方ないにゃ。今日はシャワーでも浴びて寝るにゃ。デボラお姉様も一緒に寝……あたっ」
「馬鹿言うんじゃないよ。そんな口が叩けるなら、もう大丈夫だね」
「2階に3部屋ある。俺は下で寝るから、適当に割り振ってくれ。まあ、女は女で寝るのが普通だと思うが」
「……と言ってるけど、どうするかい?」
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