516: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/13(金) 20:48:51.35 ID:IYt6kOGhO
「……何??」
「この勝負は譲るぜぇ。サービスだぁ」
……無謀な賭けに出ておきながら、自分から降りるだと!?
「何を考えている」
「若人へのプレゼントさぁ……ああ、オーティス。足りねえチップは、俺の右腕を担保だぁ。10枚ほど貰えるかぁ?」
「なっ!!?」
「状況はお前が有利だぁ。俺は弾が足りてねえからなぁ」
ニヤニヤとオーバーバックが嗤う。そこには焦りも虚勢もない。本当に余裕があるのか?
「しかし、オーバーバック様……」
「殺されてえのかぁ?」
「ひっ!!?準備いたしますっ!!」
そう言うとオーティスはチップを取りに部屋を出た。オーバーバックは中から鍵をかけると、身を乗り出す。
「で、何を訊きたい?」
訊きたいことは腐るほどある。オーバーバックの正体、エストラーダ候の行方。しかし、今は……
「メディアという女、何者だ」
オーバーバックは「やはりなぁ」と口の端を上げた。
「何でお前があの女を嗅ぎ回るのかはさっぱり分からねえがよぉ。……あの猫と組んでるわけだなぁ」
「お前に言う義理はない」
「まあせっかくだから、それは不問としてやるよぉ。で、メディアという女のことだなぁ?
実は俺も詳しくは知らねぇ。俺はこのせ……いや、この街についちゃほとんど知らねえからなぁ……」
「しかし、俺よりは知っている」
ククク、とオーバーバックが嗤った。
「違いねぇなぁ。あの女、人間じゃねぇらしいなぁ」
「……魔物の類いか」
「さぁなぁ。ただ『女神の樹』の『一部』だって話だぁ。その体液は、万病の薬となるとか聞いたぜぇ」
「それがアヴァロンの狙いか?」
奴が肩を竦める。ドンドン、とドアを叩く音が聞こえた。
「オーバーバック様」
「せっかくだから、あと5分待てよぉ」
オーバーバックが酒らしきものを口にした。「椰子酒」か。
「……アヴァロンには雇われた立場だからなぁ。せっかく博打と女を楽しんでたら、奴が戻って来て俺を見つけやがったぁ。
テルモンに行ってたって聞いたから油断してたぜぇ……」
「なぜアヴァロンがここに?」
「それは次の勝負に勝ってからだぁ」
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