495: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/11/01(日) 21:15:55.06 ID:7lCLmiUQO
「メディアさんだにゃ」
居心地の良い胸の中から抜け出し、ボクはくるんと一回転して亜人の姿になった。
「……どうして私の名を?」
「カルロスさんからの使いだにゃ。あなたを救うお手伝いをしているにゃ」
「カルロスさんの?」
初めて感情が見えた。僅かな喜びと、僅かな驚きだったけど。本当にこの人、カルロスの恋人なのかな?
そもそも、猫が亜人になるのを見てもそんなに驚いていない。不自然なほど、超然としている。
とりあえず、ボクは頷いておいた。
「にゃ。あなたにもう一度会いたいって。そもそも、あなたを連れ去ったのは誰にゃ?ユングヴィの誰かかにゃ?」
「……そっとしておいて。私はここで死ぬ定めなのだから」
「……にゃ??」
「彼は確かに大切な人。一緒に過ごしたかった。でも、彼の言うことが確かなら……」
「彼??」
外から靴の音が聞こえた。
「メディア、そこに誰かいるのですか」
まずいっ、これ以上ここにいるのは……自殺行為だ。
「いいえ、誰も」
「そうですか。入りますよ?」
「少し待っていただけますか。身支度を」
ボクは猫の姿に戻り、彼女の肩に乗った。そして早口で囁く。
「その首飾りだけもらえるかにゃ?」
「これは構わないわ。不要なものだから」
小声で言うと、そっとメディアがボクの首に査証をかけた。
「バレないかにゃ?」
「これを気にしているのはテルモンの人だけだもの。『彼』には関係ない」
「ありがとにゃ。また会うかもにゃ」
ボクは窓から一目散に逃げだした。
……「彼」……多分あれは、ミカエル・アヴァロンだ。
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