477: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/27(火) 19:55:57.99 ID:kXxvSfJ/O
俺はカルロスに近付く。外套のフードを取ると、すぐに奴の顔が強張ったのが分かった。
「……『魔王』エリック……!!?」
「あたしもいるよ」
デボラの姿を見て、カルロスの歯がカチカチと鳴った。まだ、そこまで怯えているのか。
「……デボラ・ワイルダ!!?な、何だよっ!!もう、ケリは付いたじゃないかっ!!」
「何だい、そんなに怖がるものかい?安心しな、旦那のことはあんたの父親を討ったことで終わってるよ。あんたには何の罪もないし、取って食いやしないさ」
「じゃ、じゃあ何でここにっ!!?」
俺の後ろからプルミエールが顔を出した。
「どうしたの?知り合いなのは分かったけど」
「前に少し話したが、デボラの旦那がこいつらの傘下の『無頼衆』に殺されてな。仇討ちしたわけだが、こいつはその倅だ」
「えっ……」
カルロスは俺を睨んでいる。驚愕と恐怖、そして憎悪が入り交じっているのが俺にも分かった。
本来、面倒事に首を突っ込むのは俺の主義ではない。だが、こいつにとって俺は仇だ。いかなる理由があれ、多少の負い目はある。
俺は改めてカルロスを見た。上等に仕立て上げられたはずの服は汚れ、あちこちが解れている。どこかから必死で逃げてきたのだろう。
「ちょっと野暮用でな。これからロックモールに行く」
「何だって!!!」
カルロスの目の色が変わった。
「本当にロックモールに行くのかっ」
「……?そうだが」
「俺も一緒に連れていってくれっ!!!金なら幾らでも出す」
尋常ならぬ血相だ。さっき主人が言っていた、主導権争いに絡むことか?
「金には困ってな「話を聞かせて」」
プルミエールが割り込んできた。
「プルミエール」
「そのぐらいはいいでしょ?昔あなたたちに何があったかは、詳しく知らないけど」
「そうさね。訳ありなのは確かみたいだ。困っているなら誰にでも手を差し出すのがうちの流儀だしね。いいだろ?エリック」
「……好きにしろ」
俺は軽く息を付く。店主が「奥の部屋を使いな」と合図した。
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