魔王と魔法使いと失われた記憶
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471: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/24(土) 22:31:45.60 ID:bALXQCzKO
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モリブスからロックモールまでは丸3日かかる。幸い、モリブス領内では私たちの安全を確保してくれるようにすると、ベーレン侯が確約してくださった。
「シェリル」、もといテイタニアの襲撃の件で、ラミレス家もベーレン侯に大きな貸しができたという。「統領選当選がほぼ確実になったことを考えれば、この程度でも安いものたい」だそうだ。

私たちは最初の宿場町、サンティアナに着いた。交易路らしく、大荷物を馬車に積んだ商人が目立つ。

「賑やかなものですね。バザールみたいなのもある」

「南ガリアの農作物の評判はいいからね。テルモンでは高く売れるのさ。とりあえず、飯にするよ。酒はイケるかい?」

「はいっ!実は結構好きなんです!エリックもいいわよね?」

「構わん」

「ボクはお酒あんまりなのでいいかにゃ?」

「いいさ。とりあえずあそこにしようか。うちのもんも使っているとこさ」

デボラさんを先頭に入る。酒場は商人と護衛の傭兵で一杯だ。

「らっしゃい。注文は」

「『テキ』のソーダ割りを3杯、ココのミルク割りを1杯。ツマミにボガードのサラダ、鶏のティッカ焼き……辛いのはプルミエールがダメだから……茄子の挽肉詰め辺りでいいかね。
それと、ロックモールの最新事情を知りたいねぇ。変わりはないかい」

「……あんた、ワイルダ組のデボラ大姐か。外套で気付かなかったぜ」

「いいんだよ。で、どうなんだい?」

主人と思わしき口髭の男が、辺りを軽く見渡した。

「……テルモンの奴らはいねえな。ならいいか。テルモンとゴンザレス家との関係が、最近悪化してる」

「元からそんな仲は良くないだろ?」

「今回はちと違うらしい。テルモン領側の連中が軍隊を派遣してるって話だ。ここ数日のことだ」

「どういうことですか?」

デボラさんが振り向いた。

「ロックモールは世界二大歓楽街の一つさ。テルモンとモリブスの共同統治ってことになっててね。博打をテルモンの軍閥が、色事をモリブスのゴンザレス家が仕切ってるのさ。
一応持ちつ持たれつでこれまでやってたんだけどね。ゴンザレス家が1年前にベーレン侯に弓引いてからは大分押されてるんだよ」

「……あの時のことだな」

エリックの言葉に、デボラさんの表情に翳が差した。

「……まあね。あたしの旦那が殺されたのはその時さ。エリックのお陰でゴンザレスの乱は収まったわけだけど……ここで辛気臭い話をするのはやめとくかね。
とにかく、ゴンザレス家はあれで大分弱体化したんだ。もちろん、あたしたちワイルダ組には特大の貸しがある」

「ロックモールの花街が大分テルモンの影響を受け始めてるという話は聞いたことがあるな。そういうことか」

「まあね。ああ、もちろんあんたが気に病むことはないよ。ゴンザレス家の連中は、命があるだけまだマシと思うべきさ。
ただ、そうなると困ったね……軍隊まで来てるとなると、ゴンザレス家の庇護もそんなに当てにできそうもないってことか」



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