魔王と魔法使いと失われた記憶
1- 20
388: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/13(火) 21:57:22.40 ID:ARENFlNKO


若い男の顔が目の前に近付き……すぐ離れた。


『……よろしいですね?』

『……分かりました』


……何が起こったのだろう?しかし、今「憑依」されたのは、間違いない。


「キス……」

「え」

エリックに治癒魔法をかけながら、エリザベートが呟いた。

「キスよ。多分、一瞬でも触れたら発動するんだ。ベーレン候があっさり『乗っ取られた』理由が分かった」

その通りだった。ラスカ夫人はすぐに地下室に行き、ベーレン候にキスをした。ベーレン候は用心深いらしいけど、夫人からのこうした求めは普段通りだったのだろう。だからあっさりかかったんだ。
そこからは予想通りだ。ベーレン候は乗っ取られ、一直線にジャックさんの家に向かう。ラスカ夫人はその間、キスで邸宅を全てシェリルの支配下に置いてしまった。

確かに恐るべき力だ。でも……

「キスに気を付ければいいって程度なら、多分……」

「うん、そこまで脅威じゃない。でも……」

薬で眠るエリックを見た。そう、その程度なら彼は普通に何とかするはずだ。
でも、あの様子は……明らかに、追い詰められてた。しかも、あんな重傷を負うほどに。

エリックの「加速」は、かなり使い勝手のいい魔法だ。どういう原理かは分からないけど、速く動けるだけでなく細かい動作もできるようだった。
攻撃に使えば打撃力を高め、守備に使えば大体の攻撃は避けられる。そう言えば、ランパードさんが稽古で「ちっとも当たる気がしねえから『加速』はやめてくれねえか」と愚痴ってたっけ。

だから、相手が余程の相手じゃない限りは、こんなことになるはずがない。それこそ「クドラク」……ファリスさんぐらいでなければ。


……ファリスさんぐらいでなければ??




<<前のレス[*]次のレス[#]>>
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6] 書[5] 板[3] 1-[1] l20




VIPサービス増築中!
携帯うpろだ|隙間うpろだ
Powered By VIPservice