魔王と魔法使いと失われた記憶
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386: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/13(火) 21:55:16.94 ID:ARENFlNKO


私は咄嗟に丸薬を唇に咥える。そしてそれを彼の口に合わせ、舌で押し込んだ。


「むぐっっ!!!?」


「んっ……んんっっ!!」


舌から、熱い鉄のような味がした。彼は最初拒んでいたけど、舌で丸薬を受け取り……ゴクンと飲み込んだ。


唇を離す。口は、彼が吐いた血で濡れていた。汚れるのも気にせず、それを拭う。


「プルミエール……」

「エリザベート、出血とかは?」

「う、うん。……大分、止まってきた。骨がどうなってるかは分からないけど」

女性……多分ラスカ夫人だ……には目立った外傷はない。ここから落ちた時の衝撃は、全部エリックが肩代わりしたのだろう。

バタバタと、ラファエルさんたちが部屋に入ってきた。

「どうしたっ!?」

「至急寝床を2つ確保して下さい!!」

「分かったっ」

エリックが私を見た。

「……俺より、ラスカを……詳しくは、あとで、話す」

「うん」

彼が意識を失ったのが分かった。あの「霊癒丸」の効き目は、自分でもよく分かってる。3刻ぐらい寝れば、きっと体力は戻るだろう。

「エリザベート、エリックは任せたから、私はこっちをやる」

「う、うん」

ラスカ夫人を寝かせると、私はすぐに詠唱を始めた。土地の代わりに人を媒体とする……言われてみれば、確かに原理は同じだ。
巻き戻す時間は……とりあえずは今朝。そこから、3時間ぐらいまでを3倍速で見る。これでいいはずだ。


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