331: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/10/01(木) 20:42:33.13 ID:mKWppRREO
急にジャックさんが車椅子で現れた。口元には意地悪そうな笑みが浮かんでいる。
「ひあっ!!ビックリしたぁ」
「甘いとはどういうことです?」
「昨日は初日だったからな。これからこの家のマナ濃度を徐々に上げていくぞ。寝ている間も修行というわけだ。まずはマナの総量と体力を増やす。
近いことを昔エリックにもやったが、それよりも負荷は掛けさせてもらう。当然『夜の運動』なぞやっている暇も余裕もないぞ」
「『夜の運動』?」
ギクッ、とエリザベートの動きが固まった。
「まあお前らは安心だ。エリックのヘタレはよく知っているからな。そろそろジョイスが来るから、手早く終わらせておけ」
「は、はいっ」
ジャックさんが去ると、エリザベートが大きな息をついた。
「消音魔法掛けてて気付くとか……」
「何やってたのよ、あなた」
「プルミエール、気付かないのかい……そいつら、『番』だよ」
「『番』?」
「要は夫婦ってことさ。違うかい?」
「は???」
思わず大声が出た。
え?エリザベートって結婚してたの??そりゃ私より少し歳上だけど、見た目はこんな子供なのに。
エリザベートは「ははは……」と苦笑している。
「厳密には『番』予定なんですけどねぇ。まだ正式には婚約の儀を行ってないから」
「トリスの風習は知らないけど、こんな早いうちから結婚するとはねぇ。まあ、好色多淫でエルフは有名だから、若くてヤッてても驚かないけどさ」
「むう、失礼な。ロックモールやベルバザスの娼婦と一緒にしないでくれますかねぇ。私はビクター一筋で10年ですよ?」
「……え、そんなのずっと一緒に勉強してきて初耳なんだけど」
「休暇とかの際に、ね。ま、別に隠しておくことでもなかったんだけど」
さすがにちょっと驚いた。言われてみれば、2人の距離感とか納得するものがあるけど。
「……そ、そうなんだ……というか、あの黒猫、もしあなたたちが、その……してるとこに来たらどうしたんだろ」
「え」
エリザベートの表情が固まる。
「ご、ごめん。変なこと言っちゃったかな」
「いや、違くて。『草』の猫、三毛猫なんだけど」
部屋に重苦しい沈黙が流れた。……私たちの知らない誰かが、偵察に来ている?それともただの猫?
不安を抱えているうちに、呼び鈴が鳴った。
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20