286: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/21(月) 15:19:16.26 ID:MsiqRxPqO
彼女の人生は何だったのだろう。
昨日の夜から、ずっとそればかり考えていた。
ファリスさんは、必死で「生きていた証」を欲しがっていた。なのに、彼女が生きていた痕跡は……私の掌の中にある、この金属の欠片しかない。
亡骸も何も、なくなってしまった。こんな終わり方は……あまりに、惨過ぎる。
魔王が選んだ方法は、きっとやむを得ないことだったのだろう。私の身に危険が及ばないようにするには、彼女を塵にすることで、私たちが関わった痕跡を消すのが最善だというのは分かる。
私が彼女に対して持っている感情は、魔王の言う通り単なる甘ったるい感傷に過ぎないのかもしれない。
それでも。……彼女は、こんな人生の結末を望まなかったはずだ。
なら、私は昨晩何をすべきだったのだろう?何度心に問うても、答えは出てこない。
ただ、私にできることは……非情な選択をした、魔王を恨むことしかなかった。それは、きっと間違っているのだろうけど。
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