魔王と魔法使いと失われた記憶
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274: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/18(金) 21:10:40.00 ID:TbDVBCa4O
「……まあ、お前さんにとっては因縁の相手だな。向こうにとってもそうだろうが」

「……奴もここに?」

「いや、そこまでは知らねえんだ。まあ、デイヴィッドが来てるならすぐに分かるだろうが。手段を選ばねえからな」

デボラが真剣な表情で視線を落としている。……訳あり、か。

こほん、とエリザベートが咳払いをした。

「とにかく、貴方たちを守るには、私も加わった方が安全ってことです。
私はそんなに強くないけど、『憑依(ポゼッション)』と感知魔法だけならビクターよりも上だから。それと、アリス教授にお願いされたお使いもあるし」

「お使い?」

「そ。ジャック・オルランドゥ公の所に行くんでしょ?私も一緒に連れていってくれませんかねぇ」

「どういうお使いなんだ」

「手紙を託されてて。私が直接渡せって」

……何だか妙なことになってきた。こいつとは20数年ぶりの再会だが、この妙なノリにかき回されるのは変わらないのか。

俺は軽く溜め息をつく。

「……好きにしろ」

「やったあ!じゃ、早速……」

ランパードが「ちと待てや」とエリザベートの裾を引っ張った。

「もう一つの用件が済んでねえだろうが」

「もう一つ?……ああそっか」

「こっちを先に片付けねえといかんだろ。クドラク退治の後始末だ。
実はさっきエストラーダ候のとこ行ってな、ファリス嬢が消えたって大騒ぎになってる。
んで、クドラクの死体も『遺物』の残骸もないと来た。官憲に言えねえのは分かるが、死体とかどこに隠した?」

俺はふう、と息をついた。

「ない」

「……は?」

「だからない。俺が『消した』」

上の階で塞ぎ込んでいる小娘を思った。あいつはもう、納得しているだろうか。していないだろう。
だが、こうするしかなかった。俺たちに注目が集まらず、かつエストラーダ候を多少なりとも傷付けずに済むには。



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