268: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/18(金) 21:05:28.78 ID:TbDVBCa4O
鋭い南国の陽射しに、俺は思わず身を捩った。
体力はまだ回復しきっていない。「音速剣」に、2倍速での「零勁」2発。さらにその後も「腐蝕」を使っている。戻りきるまでには、あと1日はかかるだろう。
壁に掛かった時計を見ると、正午の半刻前だった。本当はまだ寝ていたかったが、部屋の暑さと明るさはそれを許しそうにもなかった。
「……ちっ」
舌打ちをしつつ、身体を起こす。やることは幾つもある。ワイルダ組の本部に、いつまでもいるわけにはいかない。
……そういえば、小娘は俺を起こしに来ていない。大体俺より早く起きているはずだが。
部屋を出ると、ラファエルの姿があった。
「やっと起きたんすね」
「小娘は」
「まだ部屋す。昨日は、色々ありましたから」
軽く鼻を鳴らして、彼は肩を竦めた。
「……寝ている、というわけではなさそうだな」
「まだ堪えてるみたいすよ。涙のしょっぱい匂いがしますもん」
「……馬鹿が」
小娘は、ファリス・エストラーダがクドラクになった経緯について、ある程度知っているのだろう。
それにアミュレットが関与していることも、薄々分かった。小娘なりに、ファリスに同情する面はあるのかもしれない。
だが、先に進まないと話にもならない。そもそも、誰が奴を救えたというのだ。
苛立ちと共に小娘の部屋に向かおうとした俺を、ラファエルが呼び止めた。
「あ、ちょっと待ってください。客人が来たみたいす」
「客人?」
「ええ。多分、あのエルフです。それと、もう一人……女すね」
「……女?」
エルフ……ビクター・ランパードか。あの一件の後、デボラの治療を受けたと聞いている。
その後どこかに消えたらしいが。女とは、奴の協力者か。
呼び鈴が鳴る。下の階にいるデボラが「なんだい」と不機嫌そうに言ったのが聞こえた。
「エリック、客だよ」
やはり俺に用か。俺は溜め息をついて、シャツのまま下に降りる。
「ランパードか、手短に……」
「あ、エリックだ!!」
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