254: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/15(火) 19:40:32.43 ID:mfBVGPEoO
「……それって」
ファリスさんの視線が、転がったままの右腕に向いた。
「あの、アミュレット……あれは、ベルチェル家にかけられた、呪い。かつての当主の意思が込められた、呪いなの」
私ははっとした。確か、彼女の母親の家って……
「まさか」
「……身に付けた者は、過去の当主の技術を受け継ぐの。そして、暗殺者としての業も。
……その末路は、人間性の喪失。脳の病と共に、自分が失われるの」
「あなた、そこまで知ってて、何でっ……!!」
「それで、いいと思っていた。このまま朽ちるくらいなら、と。でも、そう考えること自体……私は呪いにかかっていたのかも……ゴフウゥ!!」
再び、彼女は血を吐いた。
「ファリスさんっっ!!!」
「ハアッ、ハアッ……いいの」
視線が、魔王に向いた。
「……お願いが、あります……あのアミュレットを……壊して」
魔王は小さく頷いた。
「無論だ」
「……ありがとう」
声が弱々しくなっている。……もう、治癒魔法の効果が……切れるんだ。私の目から、涙が溢れた。
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