253: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/15(火) 19:39:33.18 ID:mfBVGPEoO
「やっと、終わりに、できた……いつか、止めてくれる人が……ごぷうっ……!!」
口から大量の血が吐き出された。
「もうしゃべらないでっっ!!……死んじゃう……!!」
「いい、の。……助からないことは、分かってる……」
ファリスさんの目の光が消えかかっている。
その時、魔王が彼女の背中に手を当てた。……掌が、黄色く光っている。
「気休めだ。生き延びるのはもう無理だが……数分、寿命は延びる」
彼女の呼吸が、少し穏やかになったように感じた。治癒魔法をかけたんだ。
「エリック……」
「話したいことがあるのだろう?そのぐらいの時間は作らせてやる」
「……ありがとう」
彼の優しさが、胸に染みた。でも、それに浸っている時間はない。
「……これは、あなたの意思なの」
彼女は、自嘲気味に笑った。
「そうとも言えるし、そうでないとも言えるわ……。私は、生きている証を残したかったし、お父様の役にも立ちたかった。
そして……貴女は危険だった。貴女の……『追憶』は、お母様が何者かを、暴いてしまう」
「エストラーダ候は、お母様の行いを」
「やはり、全て知ってたのね」
私は無言で頷く。ファリスさんが、憑き物が取れたように穏やかな表情になった。
「……お父様は、命令は、してないわ。でも、お母様がクドラクというのは、気付いていたと思う。私が、クドラクというのは……きっと知らないけど。
……とにかく私は、自分の意思で、クドラクになることを選んだわ。でも、すぐに自分が自分でなくなることに……気付いた」
761Res/689.43 KB
↑[8] 前[4] 次[6]
書[5]
板[3] 1-[1] l20