191: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/04(金) 21:06:34.15 ID:p7BjaNK9O
「……おかあ、さま?」
「ファリス。お父様に苦労はかけたくないの。だから、『お母様がお母様でなくなる前に』、先に逝くことにしたの」
「やだっ!!!わたし、おかあさまとはなれたくな…………」
お母様が、さっきより強く私を胸に抱き締めた。お母様の目は、涙で溢れていた。
「私だって、貴女やお父様と離れたくないの!でも、これは……定めなの。ベルチェル家に生まれた者の……」
「……やだよぉ……おかあさま、いかないでよぉ……!!」
「……貴女には、長く生きてもらいたいの。だから、これを使うのは、本当に必要な時だけ。……それで、お父様を助けてあげて。私の分まで」
「でもっっ!!」
お母様が、私の額に指を当てた。意識が、急に遠ざかっていく。
「20に……この夜……思い出せる……どうか……」
途切れ途切れの言葉が聞こえた。そして、私は……この数分間の全てを「忘れた」。
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