182: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/09/03(木) 19:27:37.84 ID:2/zsC842O
「……私たちが、必ず貴女を治します。ご心配なされないで」
「プルさんはお優しいのですね」
「い、いえっ!?……そんなことは」
「ありますわ。本当のことを伝えて下さった。嘘は、必ず明らかになりますもの……そして、その時どれほど傷付くか」
私は、自分の身分は勿論、姿すら偽っている。それを知ったら、彼女はどれだけ悲しむだろう。
動揺を顔に出さないよう、私は必死で堪えた。
ダメだ、今は真実を明かす時じゃない。
「……私は、ただの助手です。買い被り過ぎです」
「うふふ。謙遜なされないで」
直接、クドラクについて訊こうかとも思った。でも、きっと「知りませんわ」と返されるだけだろう。彼女の人となりを知れただけでも十分だ。
あとは、アミュレットを何とかしないといけない。あれを使わなければ、彼女が凶行を起こすことはないはずだ。
私は、化粧台の上のアミュレットに視線を移す。
「……ところで、あのアミュレットは?エストラーダ様からは、お母様の形見だと」
「ええ。とても貴重なものと聞いていますわ」
「手にとっていいでしょうか?」
「いいですわ」
化粧台に向かおうとしたその時。
「……ゲフゲフ、ゲフッッ!!!ゲーッフゲフゲフッ……!!」
さっきとは比べ物にならないぐらい、ファリスさんが激しく咳き込んだ。口からは、血が一筋二筋垂れている。
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