139: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/27(木) 12:29:09.15 ID:IcevcAFHO
「ま……『エリック』!!」
思わず魔王と言いかけて言い直した。ただでさえ騒ぎになりかけてるのに、火に油を注ぐようなことをしてどうするの?
魔王はというと、斬られた右腕を押さえていた。血がボタボタと流れている。決して浅くはなさそうだった。
「逃げ…………!?」
今度は私にもハッキリ見えた。空間の歪みだ。
それは、私の方に向かって来るっ!!?
地面に倒れていた身体を、僅かにひねった。
「キャッ!!?」
ザクッ
本当に、間一髪だった。顔の横の地面に、血塗れの短剣が突き刺さっている。それを握る腕は……存外に細い。
「間に合わんかっっ!!!加速(アクセラレーション)3!!!」
魔王が叫ぶ。そして、左手だけで私を抱えあげると彼は猛然と逃げ出した。
私たちのいた広場が、みるみる間に小さくなっていく。通り過ぎる人々が、目を丸くしているのが分かった。
しかし……200メドほど走ったところで、魔王は……止まった。褐色の顔色が、土気色になっている。
もう、体力がもたないんだ。私から血の気が引いた。
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