124: ◆Try7rHwMFw[saga]
2020/08/21(金) 20:37:51.96 ID:GUtbYzIjO
エストラーダ候の家は新市街の高級住宅街にある。デボラさんから伝えられた住所に行くと、高い壁で囲まれた邸宅が見えた。
「すごい……お城みたい」
「『七貴族』の家はどこもこんなものだ。まあ、やはり正面から接触するのは至難の業だな」
邸宅の門には衛士が2人。確かに、立ち入るには許可か何かが要るだろう。
それにしても……これって。
「……中からこっそり抜け出すって、難しそうね」
「だな。抜け出すには壁を何とか越えるしかないが、普通の身体能力じゃ無理だ。
それに、昼にそんなことをしたらさぞ目立つだろう。仮にそんなことをするのなら、夜しかない」
「……本当に、そのファリスさんが『クドラク』だと思ってるの?病気の女の子なんでしょ?」
「ということになってるが、本当かどうかは分からん。何にせよ、クドラクと一度相対しないと何とも言えん」
「私たちを狙って、クドラクが外のどこかの国から来たという可能性は?」
魔王が首を振る。
「それにしては、統領でもないエストラーダに肩入れし過ぎている。
もちろん、エストラーダに政権転覆してもらいたいと考える連中……テルモンの皇帝ゲオルグ辺りの差し金という可能性はあるが。一般人まで殺す理由はない」
「それはファリスさんだってそうでしょ?」
「会ってみないとどういう人物か分からんだろう。か弱い少女が殺人鬼だったという例はなくはないからな」
「でも、剣の達人っていうのはおかしくない?」
魔王が額に皺を寄せた。
「しつこい奴だな……ただ、分からんことが多過ぎるのも確かか。一度ジャックに報告したいが、今から行くと帰りは夜だ。
『追憶』を使いたいところだが……」
衛士がこちらを見ている。フードをすっぽり被った男に、黒いローブの魔法使いというのは……やっぱり目立ちすぎるよね。
とても時間をかけて「追憶」を使える感じではない。そもそもいつからいつまでを「再生」すればいいのかが分からない以上、使う魔力は膨大になりそうだった。
「一度、引き揚げようか」
「……その前にだ。バザールに行くぞ」
「え?」
「小娘、お前が何でオークに絡まれたか分からんのか?お前は浮きすぎている。……色々と。
せめて身なりぐらいは周りに合わせろ」
「へ?ちょ、ちょっと!!」
魔王が足早に歩き出した。「周囲から浮いているのはあなたもじゃない!」と叫びかけたけど、それをやったらいよいよ不審者だ。
というか、周りに合わせるって……
早足で歩く私たちと、若い女の子2人がすれ違った。おへそを出した、露出の多い服だ。モリブスではよくある服だけど……
……まさか、私にあんな格好をしろというの?
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