16: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:03:13.87 ID:dze2zfkn0
今回のロケ地は山深くに佇む廃病院。
呼吸器系の患者の療養を目的として空気の綺麗な環境に立てられた病院であった。
しかし、まるで患者を閉じ込めるかのような陸の孤島となっていたことと、特殊な症例の患者を多く受け入れていたことで良からぬウワサが流れ始めてしまった。
このウワサをどこからか聞きつけた患者が脱走を試みたり、治療に対して抵抗したり、非常にヒステリックな環境となってしまった。
17: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:04:07.74 ID:dze2zfkn0
「今回は、その看護師が残したという手記を見つけてきてもらいます。五階の当直室に残されているというウワサですが…」
「そ」
貴音が声を発した。
18: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:04:49.28 ID:dze2zfkn0
「そうですか…」
しかし、銀髪の女王は縋っていた法が助けてくれないことに落胆するばかりで、細事を気に留める余裕は無いようだった。
エレナは口を真一文字に結んだままで難しそうな顔をしている。
19: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:05:52.63 ID:dze2zfkn0
【4】
夜が更け、周りを照らすものは車のヘッドライトだけとなっていた。
周囲を鬱蒼(うっそう)とした森に囲まれた廃病院は、星々のか細い光に縁取られて異様な存在感を放っていた。
20: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:06:37.63 ID:dze2zfkn0
「アー、えーっと、島原エレナだヨー」
エレナは元気が足りなくて中途半端な中国人のようになっていた。
「四条貴音です…。四条貴音です…」
21: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:07:46.60 ID:dze2zfkn0
カメラが着いてきたのは病院の入り口までで、撮影用の照明を落とすと急な明るさの変化に目がついていかず、完全な暗闇に包まれた。
その瞬間にエレナは「ヒッ」と声を上げた。
ヘッドライトの弱い光が周りボンヤリと照らす様子が、徐々に視界に広がっていく。
22: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:08:22.24 ID:dze2zfkn0
エレナが右手にビデオカメラを、貴音が左手に懐中電灯を装備して、空いている手はお互いの腰のあたりの服を握りしめていた。
どちらかが逃げようとしても物理的に逃げられない布陣だ。
もし何かに襲われた場合だとお互いが障害となって逃げられない布陣とも言える。
23: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:09:30.99 ID:dze2zfkn0
【5】
道中は拍子抜けなほど何も起こらなかった。
いや、別にスタッフも何も仕込んでいないから何も起きないのは当然なのであるが。
24: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:10:56.62 ID:dze2zfkn0
「ここだよネ…?」
「島原エレナ…」
島原エレナマシーンの音量が最小値となってもはやマイクが拾えるかどうかになった頃、
25: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:11:47.79 ID:dze2zfkn0
だが、貴音の深刻そうな表情はエレナに改めて緊張感を与えるには十分であり、エレナと貴音は顔を見合わせて呼吸を合わせていた。
なおこの時、ヘッドライトに添えられた小型カメラにはお互いの顔面がドアップで映し出されていた。
ドアップで写されてもお茶の間に耐えうる美少女で本当に良かった。
プロデューサーは改めて胸を撫で下ろした。
26: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:12:59.84 ID:dze2zfkn0
バーン‼
という擬音がピッタリな勢いでエレナが引き戸を思いっきり引いた。
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