23: ◆ivbWs9E0to[saga]
2020/08/02(日) 08:09:30.99 ID:dze2zfkn0
【5】
道中は拍子抜けなほど何も起こらなかった。
いや、別にスタッフも何も仕込んでいないから何も起きないのは当然なのであるが。
貴音の場合スタッフを配置すると気配を気取られてしまう可能性があるのと、深夜の暗い状況で驚かせてしまって怪我をしてしまうリスクを考えた結果であった。
果たして何も配置していない病院風のセットで番組の撮れ高は得られるのか。
プロデューサーの懸念は杞憂に終わった。
というのも、エレナは何も起こらなくてもずっと「怖いヨ〜、怖いヨ〜」「帰りたいぃ…」「やだぁ〜」と呟きながら歩いていて、可愛いが無限に襲い掛かってきていた。
貴音は貴音で、二人の足音の反響を感知して「何奴ッ⁉」と構えてその様子にエレナが「ギャー‼」と叫んだと思えば、
その後「何も…問題ありません」と涙目で震え声を出す珍しい貴音が見られていた。
プロデューサーとしてこの貴音をお茶の間に流すのはイメージ戦略上いかがなものかとも思うが。
結果的に、何もない廊下と何もない階段を上がるだけで二人はボロボロだった。
エレナはズビズビ鼻をすすっているし、貴音はもはや何もしゃべらないようになっていた。
彼女たちが何をしていても絵になる程度には美少女で良かった、とプロデューサーは思った。
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