26:名無しNIPPER[saga]
2020/07/12(日) 21:24:31.27 ID:qe4+sBJv0
「花丸、遅いわねぇ……」
まだ外は明るくても、もう時刻は17時を過ぎている。
6歳になった女の子が一人で出歩くには遅い時間だ。
心なしか、コトコトと鍋蓋が踊る音が普段よりも響く気がした。
不意に胸の辺りがキリキリと痛んで、思わず近くの椅子に半ばもたれ掛かるように腰掛ける。
心臓が喉の下辺りにある気がした。
ドクン、ドクンという心音がやけに大きく響く。
ゼエゼエという喘ぎ声と椅子が軋む音だけが部屋に木霊していた。
「おばあちゃんただいまー!」
今の自分とは対照的な、元気な声が扉から聞こえてくる。
「おや、花丸。遅かったわねぇ。」
額に浮かんだ脂汗を慌てて拭き取り、花丸にニッコリと微笑みかける。
「良い匂い〜!」
「さあ、ご飯にしましょう。花丸、手伝っておくれ。」
いつもと変わらない柔和な笑みを顔に貼り付けて、徐に椅子から立ち上がる。
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