男「大将! 油マシマシのアチアチラーメン一丁」
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3:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:00:35.50 ID:sGoLw9kr0

 店主は、天を仰ぎ呟く。その様は、まるで神に祈る信仰者のようだ。否、現実に店主は神に祈っていた。その胸に抱く神は、「ラーメン神」。(八百万もいるのだから、そのような神が一柱がいてもおかしくなかろう)「今日も最高のラーメンが出来ていますように」と、心の底から神に祈るのだ。

 「ごちそうさまでした」

 店主の表情は安どに満ちていた。どうやら、ラーメン神は今日も彼に微笑みかけたようだ。誤解のないように言っておくが、雷来軒のラーメンの味は神頼みというわけではない。一見すると、油マシマシのパンチが強いだけのラーメンに見えるが、其の実、油の中で溺れた強烈な旨味は厳選に厳選を重ねられた材料によって重層的に、かつ緻密に積み上げられたもので、ほんの少しの狂いも許されない完璧なバランスによって成り立つものなのである。その繊細な味を保つプレッシャー故に、店主は神に祈らざるを得ないのだ。

 朝9時の一杯のラーメン。もし味に支障あれば、その日は店を開けない。これは、店主が自身に課した絶対のルールであった。

 ちなみに、そんなラーメン屋だからこそカウンターには高菜も、ニンニク醤油も、コショウすら置かれていない。店主の作るラーメンこそが唯一絶対のもので、客にそのバランスを崩すことは一切許されていないのだ。


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