男「大将! 油マシマシのアチアチラーメン一丁」
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10:名無しNIPPER[saga]
2020/07/05(日) 09:04:35.62 ID:sGoLw9kr0

 「ごちそうさまでした」

 大タヌキの声に、店主は思わず「えっ!?」と驚きの声をあげてしまった。大タヌキの食の進み具合を見定め、注文こそ受けていない者の既に替え玉をゆで始めてしまっていたからだ。それを察してか、大タヌキも申し訳なさそうな表情でカウンターに金を置き、そそくさと店を出て行ってしまった。あの大タヌキが、替え玉を頼みもしないなんてことは、いまだかつてなかった。いやしかし、ナナフシの異様な挙動がなければこんなことはなかったであろう。店主は、茹で上がった替え玉をしばし恨めしく見つめ、その責任を問うかのように視線をナナフシへと移した。

 しかし、そこにナナフシの姿はなく、カウンターに置かれた代金と、全く手を付けられていないラーメンが寂しく湯気をあげているばかりであった。

 店主は、膝から崩れ落ちた。経緯はともかく、二人の常連が、一人は替え玉を頼まず、もう一人はラーメンに手を付けさえしなかったという事実が、店主へと重くのしかかったのだ。なにが完璧なバランスだ。なにが知る人ぞ知る名店だ。店主は、更なり進歩を追い求めなかった自分自身を呪った。だが、店主が再び立ち上がるまでにそれほどの時間はかからなかった。店主のラーメンへの熱い情熱が、再びハートを燃え上がらせたのだ。 


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