【タイムパラドクスゴーストライター】アイノイツキ「消えたキリスト」
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14: ◆K1k1KYRick[sage]
2020/06/28(日) 17:56:06.31 ID:rwxHLxm40
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ジャンプを転送していたのは某放送局の番組プロデューサーだった。

『売れない漫画家の下に大ヒット漫画を送ったらどうなるか』

という趣旨の過激なネット番組を流していた。

ササキ氏の狂った自己弁護論と盗作にかける歪な情熱が映る度、観客は沸いた。

結局この番組はアイノ氏の親族から訴えられ、打ち切りになったという。

冷凍刑に処されたあのササキ氏も、また犠牲者と言えるだろう。

後日、事件を解決した私はアイノイツキ記念館で彼女のデジタル作品を読み耽っていた。

ページを捲る指は画面の上をすいすい進む。

普段漫画は読まないのだが、この作品に対しては思い入れがある。

出来れば紙媒体で読みたかったが、デジタルデータが主流となった現在

それは国立図書館か博物館にしか存在しないため手続きが面倒だ。

だが、作品の出来がそれで左右されはしない。

この手汗握る展開をあのアイノ氏が懸命に書き続けていたと思うと、身を挺して守ったあの苦労が報われる。

「うむ……あずきバーの鈍器になり得る非効率的な固さもいいが
 このスイカバーの優しい味も捨てがたい」

私はスイカバーを手にしてそれらを読み続けた。

発売元のアイノイツキ記念館に頼み込み、ペーストにする前の固体で売ってもらった。

快諾してくれた館長に感謝し、固く食べにくいそれを
特注品である下顎と上顎のパーツを用いて長い時間をかけて咀嚼する。

どうも過去に長く居たため、この形状のアイスが時折無性に恋しくなってしまうのだ。

肉体が完全に機械に変わり、食品のほとんどが流動食化した現代は効率的ではある。

だがあの不便極まりない過去と比べて、何か大切なものをごっそり失っている気がしてならない。


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