【タイムパラドクスゴーストライター】アイノイツキ「消えたキリスト」
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11: ◆K1k1KYRick[sage]
2020/06/28(日) 17:50:38.92 ID:rwxHLxm40
「……先生!?」

間の悪い事に、そこへアイノ氏が帰って来た。

彼女は途中でササキ氏の姿を見失い、戻ってきたのだ。

この惨事を目撃してしまった彼女は、声を必死にあげようとする。

暴行を加えた直後で気が昂ぶっていたササキ氏は、据えた目で彼女を姿を捉えた。

「……ごめん、イツキさん! 許してくれッッ!」

彼は再度半壊しかけのトレース台を持ち上げ、彼女の脳天に向けて振り下ろす。

「ぐっ……! うぅ……!」

咄嗟に私は、転倒した彼女に覆い被さった。鈍器の一撃が背中に当たり、骨が軋んだ。

背中に容赦なく注がれる殴打の嵐雨に、気が遠くなっていく。

「離れて下さい五十嵐さんっ……! このままじゃ、あなたも……!」

「グゥッッ……だ、ダメです……! アイノさんだけは……何としても守ります!」

たとえ自らを犠牲にしようとも、アイノ氏を救いたかった。

しかし脆弱な生身にこのダメージの蓄積は無視出来ない。

「俺は守るんだッッ! どれだけ罪を重ねてもッッ!
 アイノイツキの分までッッ! 一筆一筆、キャラに魂を込めてッッ!
 読者に感動を届けてみせる……ッッ!」

痛みで熱を帯びた背中の向こうで彼は吼えていた。

人畜無害?

全然違う――彼こそ世界で最も唾棄すべき人種だ。

涙でかたどった被害者の仮面を被りながら

その実、謝りもせず息を吐くように悪行を繰り返す悪魔。

気の遠くなる時間の中で意識が薄れるのを感じながら、私はそう思った。

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