2: ◆U.8lOt6xMsuG[sage saga]
2020/05/24(日) 01:00:10.40 ID:OM5qGz2c0
「お悔やみ申し上げます」
社長から『作法』として教えてもらった通りの言葉を吐き、あの人が高校までを過ごしたという家の玄関をくぐった。出迎えてくれたおばさんは、目元がプロデューサーによく似ていた
「今日は来てくれてありがとうね、その……うっ」
ハンカチで拭われる目元も、よく似ていて。胸の奥がズキリと痛んだ
階段を踏んで、プロデューサーが眠っている部屋を目指す。
訃報を受けてから黒くした髪の毛が窓ガラスに映った。アンタには見せられなかったな、と心残りが生まれた。
部屋に入る。勉強机、ベッド、本棚と普通の家具の中に一つ、大きな違和感を覚えるものが鎮座していた。部屋の空気は重くて、線香の匂いがきつかった。
一度息を吸って、吐いて、訳も無くうるさくなっている心臓を静かにさせようとした。ダメだった。
諦めてそのまま、歩く。白い棺の中、透明な板(アクリルかガラスかどっちだろう)を挟んで、もう動かなくなったプロデューサーと顔を合わせる。
寝ているようだった。普段事務所で仮眠を取っているときと同じ目の閉じ方。違う顔色ではあった
一人で来て良かった、と心の底から思った。こんなにボロ泣きしているのをみられたくなかったから。ああ、死んでしまったんだと、ちょっと出張に行っているみたいだった感覚が全部、『死』の実感に変わった
果穂はふさぎ込んで家から出ず、ちょこは事務所に入り浸って痕跡を探っているようで。夏葉はずっと寝込んでいるらしい。
凛世は……そもそも連絡が取れない。大丈夫だろうか心配だ
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