72: ◆ty.IaxZULXr/[saga]
2020/05/18(月) 21:33:15.75 ID:RS4SDFXO0
34
幕間
清路市内・某レンタルオフィス
頼子「我慢強いのですね、想像以上でした」
留美「……」
頼子「出てきて、お話しませんか。警部補殿?」
留美「そちらこそ、辛抱強いのね」
頼子「近づくのは、そこまで。無実の人間は殺したくありませんでしょう?」
留美「そのスイッチは」
頼子「毒を撒くのです。換気が悪く、こんな時間に人がいる場所に漂います」
留美「2階上のネットカフェ、古めかしかったわ」
頼子「分かりましたか。私も無駄な殺人は犯したくありません、そう無駄な。殺すことで何も変わらない命など奪う価値もありません」
留美「……」
頼子「銃も降ろしてくださいな。その距離では、捉えられないのもお分かりでしょう?」
留美「ええ。これでいいかしら」
頼子「あなたの善意に感謝します。会話にも応じてくださるとは、なんて心の広いことでしょう」
留美「あなたが平凡な犯人なら、そうするわ。だけれど、違う」
頼子「はて?不勉強なので、お教えくださいな」
留美「このレンタルオフィスは時間貸し。不審な名義で借りられた時間は朝5時まで。このまま我慢比べを続けても、あなたに隙は来ない」
頼子「5時からの商談はカナダの重鎮とですよ」
留美「回線が強くて、監視カメラもないレンタルオフィス。そんな使われ方をしているわけね」
頼子「ここである理由は調べていませんか?」
留美「ここである理由は、知らないわ」
頼子「商談に輸入業を営む人物が同席するから。彼のオフィスが、ここから近いのですよ?」
留美「……そう」
頼子「先手を取った、優位に立ったと実感すると、気分が良いでしょう。昨日から、あなたの気持ちはそれで満たされているはずです。警部補殿、心地よいでしょう?」
留美「……」
頼子「残念、同意されませんか」
留美「話は、それだけかしら」
頼子「そうですね、ご厚意には感謝をせねばなりません。お礼に質問に答えましょう、どうぞ」
留美「……」
頼子「ないのであれば、終わりにしますが」
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