60: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:43:52.30 ID:5z9OpdEU0
――森浦と美春は一緒に働くうちに惹かれ合い、関係を持った。
店が忙しくデートなどはあまりできなかったが、森浦がプロポーズを決心するまでにそう時間は必要としなかったという。
「和香と美春はとても仲が良かったんですよ…3人で上手く店を切り盛りして…これなら、本当の家族になれるかと…」
61: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:44:30.03 ID:5z9OpdEU0
――しかし、父から再婚話を打ち明けられた和香は、思いがけず猛反対した。
「そんなことをするなら私は出ていく。父親とも思わない」
「私は美春さんをお母さんなんて思えない」
62: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:44:57.52 ID:5z9OpdEU0
「娘があんなに怒るのを見たのは初めてでした…私も呆気にとられてしまって…」
「いえ、私が無神経だったんです…こどもにとって母親がどういうものなのか…娘が、小さい頃に亡くしてしまった母親をどう思っていたのか…考えもせずに…」
63: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:45:24.61 ID:5z9OpdEU0
――娘が反対している以上、再婚は諦めるしかない。
だが、かといって何事もなかったようにまた3人で暮らすこともできない。
再婚話の頓挫は3人の間に決定的な亀裂を生んでしまったのだ。
64: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:46:01.13 ID:5z9OpdEU0
「美春には、店を辞めてもらうように言いました…。友人のつてで、次の就職先を紹介して…」
「美春には反抗されました…わんわんと泣きじゃくって…」
「でももう私は耐えられなかったんです…それで…退職金を…いえ、手切れ金を渡したんです…もうこれで出て行ってくれと…」
65: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:47:00.90 ID:5z9OpdEU0
(それは…美春さんからすれば、プライドを傷つけられただけだっただろうな…)
紅はじっと、考えこんでいた。
仲が良かったはずの和香に裏切られた。
66: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:47:52.65 ID:5z9OpdEU0
「事件が起きたのはその10日後でした…」
「私の無神経さで、あんなことになってしまって…娘とも、仲違いしたっきりで…」
「娘に会いたい。謝りたい。今の私にあるのはそれだけです。それだけを思って、この5年間、生きてきました…」
67: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:48:20.49 ID:5z9OpdEU0
最期の方は吐き出すように語り終えた森浦が、グラスの酒を一気にあおった。
半分以上が口に入らず、派手に床や服にこぼれた。
まりが拭くものを探しに席を立つのと、紅が次の質問を投げかけるのとが、ほぼ同時だった。
68: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:49:11.36 ID:5z9OpdEU0
「森浦さん、もうひとつだけ。美春さんらしき女性と連れ添っていた男…あなたを殴った男の特徴は覚えていますか?」
「坊主頭で…顔はよく見ていません。背はかなり高くて…」
(気が動転していたそうだし、顔を覚えていないのも無理はないか…)
69: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:50:07.64 ID:5z9OpdEU0
まりが台所からタオルを持って戻ってきた。
「すみません、ちょっとお借りしました〜」
「いえ、大丈夫ですから…」
70: ◆H5MbwxPKRo[sage]
2020/05/16(土) 17:50:53.61 ID:5z9OpdEU0
「森浦さん…」
「はい?」
「その…和香さんのこと、絶対に見つけ出しますからね!美春さんも!きっと仲直りできますよ!」
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