ターニャ・フォン・デグレチャフ「自動、手記人形……だと?」
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名無しNIPPER
[sage saga]
2020/05/09(土) 23:35:56.19 ID:PWWmuiJvO
「伝令を用意しろ! 無線は役に立たん!!」
「はっ。既に天幕にてご用意しております」
妨害電波により、無線は機能していない。
仮に届いたとしても敵に傍受されてしまう。
いかに便利な魔法があれども、最後に縋るのは人間の足というのがなんとも皮肉だった。
「ヴァイス。貴様は戦場に戻れ」
「はっ。セレブリャコーフ少尉には何と?」
「必ず戻ると。それだけを伝えろ」
「はっ。小官もお待ちしております」
「ああ、すぐ戻る。行け」
戦場での一時の離別は永遠の別れに等しい。
また会える保証はなく、言葉は空虚に響く。
確固たる意志で補強して、少佐は離脱した。
「死ぬな」
背後には、戦場上空を雲霞のように漂い。
スズメバチのように攻撃的な猟犬の群れ。
大隊全員の息災を祈る少佐はまさに女神。
「勝つために死ぬならばともかく、敗北がわかりきった戦場で死ぬことなどこの私が許さん! 人的資源の無駄遣いなどさせん!」
少佐の代わりに第一中隊の指揮権を掌握し、毅然とした姿で戦闘指揮を執る副官の姿。
手ずから育てあげたセレブリャコーフ少尉の勇姿を目に焼き付けて、少佐は伝令が待つという後方拠点の天幕まで急ぎ戻った。
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