周子「だから、あたしが逢いに往く」
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2:名無しNIPPER
2020/05/05(火) 18:37:38.82 ID:XnGtX3Tv0
 怖いくらいに鮮やかな、夕焼けだった。

 夕日が少女を照らし出すも、鮮やかな光とは裏腹にその顔は俯き陰っていた。
 腰まであろう程の長く艶やかな髪、裕福で高貴な家柄が覗える衣、
 慣れ親しんだこの神社の階段に少女が独り、膝を抱えて座り込んでからもう数刻は経っただろうか。

 太陽は石段の最上段から見下ろす先の木々に次第に吸い込まれていたが、それでも西の空から桃色が流れ出して紫の空へと混ざっていくのが見える。
 星読衆の言うところだと、この色は雨の予兆だそうで、そう言われてみれば雲が多い気がする。
 本来であれば早めに帰路につくところだが、今日に限ってはそんな気になれなかった。

 そんな少女、小早川紗枝はこの国の政治の一部を担う一族の出であった。
 幼いころから家の方針で教養や礼儀作法等厳しく教え込まれ今年で十になるが、歳相応以上に様々なことが身についた。
 勿論、まだまだ知らない事も多くあるが、身の回りの状況や知識から自身で調べ考えとできるようにはなっていた。

 今にして思えば、それが仇になったのかもしれない。



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