10:名無しNIPPER
2020/05/07(木) 17:26:18.00 ID:S8paJmtWO
林田さんは唐突に物事を提案する人だった。
一学期の終業式が終わり、文芸部も夏休み期間は休みになる。何が楽しくて、冷房もついてないくそ熱い教室に三人そろわないといけないのかという話だ。
じゃあまた二学期に。
そう言って帰り支度をしようとしたところだった。そういえば、昨日まで迎えに来ていた林田さんの男がまだ来ていないことに違和感を覚えた瞬間のことだ。
「よし、今年の夏祭りは文芸部で遊びに行こう」
「いやいや、林田さん彼氏いるじゃないっすか」
「別れたから大丈夫」
大丈夫とは。あの男、迎えに来るようになってまだ一週間だぞ。
西口さんは呆れ顔で俺に向かっていった。
「去年も毎学期、終業式にはしっかり別れて来てたからたぶん本当だよ。諦めなさい」
「諦めなさいって……」
「え、尾関くんは私たちの浴衣姿見たくないの?」
林田さんが言うところの『私たちの』には、美女二人のというニュアンスが多分に含まれているような気がした。見たくないと言えば、それが嘘になってしまうのが男の悲しい性だ。
「了解です」
「あー、今想像したでしょ。むっつりさんめ」
やっぱり断ってやればよかったかな。できないのも自分でわかってるんだけど。ちくしょうめ。
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