3:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:07:55.55 ID:GKexH31W0
そんな時、僕を拾ってくれたのがシンデレラプロダクションだ。遠い親戚のコネを使ってなんとかそこに入社させてもらえることになった。
新入社員になった僕は、プロデュース部門に配属された。
最初は先輩のアシスタントがメインだったが、入社してから数年が経ち、僕も担当アイドルを持つことになる。確かその子は俺がスカウトしたんだっけ。正直細かいところは覚えていない。まあ、それほど劇的な出会いじゃなかったってことだろう。それに8年も経ってしまえば記憶は薄れていくというもの。
4:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:08:23.37 ID:GKexH31W0
昔話が長くなったね。そろそろ今の話をしようか。この話は、そうだな……。俗にに言うとすれば――
5:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:09:05.66 ID:GKexH31W0
『1、2、3、4、5、6、ターン!』
ポーズが決まる。なかなかに映えているのではないだろうか。まあ8年以上も毎日レッスンしていたらこれくらいになるのは当たり前と言えば当たり前か。
6:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:09:37.94 ID:GKexH31W0
「悪いな。だが、朗報だ」
『なに!? やっとお仕事!?』
急に表情が変わった。現金なやつだ。ただ、その貪欲さが彼女の推しポイントでもある。らしい。
7:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:10:10.86 ID:GKexH31W0
事務室に戻って早速エントリーをする。しばらくして、オーディションの概要が転送されてきた。
一次審査はビジュアル審査か。まあ彼女の得意分野だし、どんなに無名だと言ってもさすがにここで落とされることはないだろう。
それにしても実際のところ、彼女の評価はどうなんだろう。シンデレラプロダクションは毎年、シンデレラガール総選挙と称して人気投票のようなものを開催しているけど、彼女が圏内に入ったことはないし、他の子と比べようにも、こなした仕事の絶対数が少ないから比べられない。エゴサーチなんかしてもヒットするものはほとんどないし。
8:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:10:38.16 ID:GKexH31W0
『エントリーしてくれた?』
「ああ、戻ってきてたのか。丁度オーディションの概要を読んでたところだ。一次はビジュアル審査みたいだから余裕で突破してくれよ」
『当たり前よ。ところで、○○ちゃんって分かる? その子と合同レッスンしてみたいんだけど』
9:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:11:08.67 ID:GKexH31W0
○○のプロデューサーとは個人的に知り合いだ。というか僕の5年後輩にあたる。5年も下の奴に先を越されているのだから同期内出世レースに参加すら出来ていないのもうなずける。まあ縁故採用の身だから最初から出世なんて期待してなかったけど。
予想した通り、○○との合同レッスン依頼は通った。さすがに5年先輩の頼みは断りづらかったようだ。スケジュールを調整する時に若干見下されている感は否めなくて腹も立ったけど、珍しく彼女の要望を通せたんだからと我慢した。
10:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:11:41.26 ID:GKexH31W0
合同レッスン当日、彼女はやけに気合いが入っていた。それこそオーディションの順番待ちみたいな雰囲気だ。
こういう時は何か気の利いた、リラックスできるセリフでも言えたらいいんだろうけど、それを考えている内に順番が来てしまうのが毎度毎度お決まりのパターン。今日もそうで、何を言おうかと考えている内にレッスントレーナーが入ってきてしまった。
何を言えば効果的かを教えてくれる、そんなメモ帳でも落ちてないかと願うばかりだ。
11:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:12:27.53 ID:GKexH31W0
レッスンが終わり、事務室に戻って書類仕事を始めてから数十分が経つと、レッスン着から着替え終えた彼女が戻ってきた。
『……ただいま』
「おう、戻ったか。レッスン見てたぞ。ビジュアルレッスンもダンスレッスンもよかったじゃないか。○○と比べても遜色なかった。これならオーディションも合格狙えるはずだ!」
12:名無しNIPPER
2020/04/29(水) 22:13:01.47 ID:GKexH31W0
――誠に残念ながら今回はご期待に添えない結果となりました――
――貴殿の今後益々のご活躍をお祈り申し上げます――
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