もしもし、そこの加蓮さん。
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92:名無しNIPPER[saga]
2020/04/30(木) 20:31:15.75 ID:QqIdgo5i0

 「……薄荷」

 「ああ。加蓮の曲だ」

ほとんど無意識だった呟き。
彼が何か言ってくれているのは分かりましたが、加蓮の耳には届いていませんでした。

もちろん差し込んだイヤホンのせいではありません。
タイトルの後、括弧書きで添えられた『北条加蓮』の名を、
何かと照らし合わせるように見つめ続けるのに忙しかったのです。

 「……聴いても、いい?」

 「はは。イヤでも何度だって聴くんだぞ」

 「イヤじゃないっ!!!」


彼も、叫んだ本人もびっくりしてしまうくらい大きな声でした。
反射的に口元を手で覆うと、吐息が白い霧になって消えてゆき、
加蓮は浮かび上がってきたそれをゆっくりと押し戻します。


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