もしもし、そこの加蓮さん。
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112:名無しNIPPER[saga]
2020/04/30(木) 23:38:03.30 ID:QqIdgo5i0

頁と見つめ合っていた視線がすいと上を向きました。
澄み切った美しい瞳に見つめられ、加蓮は思わず半歩だけ退がります。

 「……読んだ事が……お有り、なのですか?」

 「え、あ、うん。昔ね」

 「印象に残っている場面など……宜しければ、伺っても」

 「んー……どこまで読んだの?」

 「この本は、二度目です」

 「へ」

 「この前のお仕事で……猫と触れ合ったのです。
  何となく、猫の登場する物語を……読み直したくなりまして」


想像してしまいました。
日課の読書に勤しみながら仔猫によじ登られ、
傍らに用意した茶菓子をむしゃむしゃとつまみ食いされつつも、悠然と書に向き合っている光景を。

吹き出しそうになり、慌てて首を振りました。
小首を傾げてこちらを伺う文香に向き直り、
自慢の加蓮ちゃん書庫から記憶を引っ張り出してきます。


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