向井拓海「ひざまくら」
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2:名無しNIPPER[sage saga]
2020/04/22(水) 22:06:42.15 ID:CvEezSxo0
「……プロデューサー」

 それから十分ちょっと。瞬きをするくらいの一瞬だったようにも感じるし、無限に思い返して噛み締められるくらいの長く満たされた時間だったようにも感じるけど、壁に掛かった時計の針によればどうやら十分をちょっと過ぎたくらいらしい。
 膝枕。無防備に預けられた頭を太ももの上へ受け止めて、そのまま目を閉じ口も結んだプロデューサーを同じく無言で、でも逆に目は閉じずまっすぐじっと見つめながら時間を重ねるこれ。これを始めてからもう十分。
 始まりはプロデューサーから。……プロデューサーの担当するアイドルは今アタシだけ。だから仕事はアタシのため。朝からいくつも作ってる書類も、何度も繋ぐ電話も、繰り返し送り送られてくるメールも、その何もかもがアタシのため。だから断れなくて。プロデューサーの「仕事で疲れたな。拓海に癒してほしいな」なんて言葉を。断らず……本当は断る気なんて欠片もなくて、むしろアタシのほうからさせてほしいくらいで、でもアタシのほうからはそんなこと言えなくて。だからそれに気付いてるプロデューサーが、自分の発言ってことにしてくれてるこれを受けて。少し迷って拒むような形だけ嘘のふりをしてから、それからこれは始まった。今日もまた。そうして。
 終わりは特に決めてない。アタシのレッスンは済んでるし、プロデューサーの仕事も纏まってる。だからきっとギリギリまで……今日もいつも通り家へ送る前にご飯も一緒してくれるんだろうから、それをして家に着くのが門限を破らないギリギリまでは続けてくれるんだろう。アタシはべつにもっと遅くまで一緒だって構わないし、むしろそのほうが嬉しいんだけど、でもまあ体裁ってやつがあるらしい。だからそのギリギリまで。その頃になったらプロデューサーが起きて終わらせてくれる。……アタシから終わらせるのは、たぶん無理だから。


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