9:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:15:43.83 ID:/ZuzgcCF0
完璧に歌えて、完璧に踊れた。
何が違うのかわからなかった。
私とこの子の何が違うのか、全然わからなかった。
いや、それどころか……私の方が上手いんじゃないかとさえ思えた。
10:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:17:45.35 ID:/ZuzgcCF0
……やっぱりそうなんだ。
私の歌とダンスはあの子よりも上手いんだ。
それが証明されたんだ。
それに気付いてから、私のあの子を見る目は変わった。
11:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:19:01.96 ID:/ZuzgcCF0
私と何も違わないことを確かめるため。
私の方が優れていることを確かめるため。
そのために何度も映像を観た。
そんなことをしてどうするつもりなのか。
12:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:20:15.32 ID:/ZuzgcCF0
トップアイドルの天海春香。
私は天海春香に憧れていた。
でもその感情は少しずつ、はっきりと変わった。
13:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:21:15.95 ID:/ZuzgcCF0
もしかしたら天海春香は裏で何か……。
半ば本気でそんなことまで考えそうにもなった。
ただ、そんなことを考えそうになる自分が嫌になる程度には、まだ私の良識は残っていた。
でもいっそそんな良識も無くしてしまえた方が、寧ろ楽だったかも知れない。
それなら自己嫌悪に陥ることなんて無くなるのだから。
14:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:22:29.48 ID:/ZuzgcCF0
時々、私の家にアイドル好きの友達たちが遊びに来た。
それは私にとって辛い時間だった。
だってその子たちはみんな765プロのファンだったから。
だから遊びに来るたびに天海春香の映像を観たがった。
断る理由を上手く思い付けない私は、どうしても一緒に観ざるを得なかった。
15:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:24:37.27 ID:/ZuzgcCF0
そんな毎日がどれだけ続いただろう。
「その日」は突然やってきた。
いつも通りレッスンのために事務所に行くと、事務員さんが話しかけてきた。
近々開かれるいくつかのオーディションの中にお勧めできそうなものがあった、って。
16:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:26:22.43 ID:/ZuzgcCF0
チャンスだ、と思った。
天海春香のすぐ近くで踊ることができる。
そうなればきっと、誰かが気付いてくれる。
天海春香よりも私の方が実力があるんだって。
17:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:27:40.67 ID:/ZuzgcCF0
オーディションに行くと、たくさんの希望者が集まっていた。
それはそうだ。
なんせ「あの天海春香」のダンサーになれるチャンスなのだから。
集まっていたのは、やはり彼女のファンが大半のようだった。
聞こえてくる会話からそのことはすぐに分かった。
18:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:29:48.96 ID:/ZuzgcCF0
私は他の誰よりも気合を入れてオーディションに臨んだ。
そして、合格した。
当然だ。
気持ちだって、実力だって、私は他の誰にも負けてなかった。
私以外にも何人か合格者は居るけど、その子達にだってもちろん負けてない。
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