27:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:50:44.18 ID:/ZuzgcCF0
そうしてミュージックビデオの撮影が始まった。
カットごとに、まずはダンサーだけのシーンから。
私が映るカットもいくつか。
短いけどダンスも。
28:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:55:01.08 ID:/ZuzgcCF0
今日はもう、これ以上天海春香を観察しようだなんて思わない。
そんなことより、私だ。
私の実力を、ここに居る全員に見せる。
そのことだけを考えよう。
29:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:57:17.13 ID:/ZuzgcCF0
私は自分自身に全神経を集中していたはずだった。
自分を見せる、ただそれだけを考えているはずだった。
目はまっすぐに前を見据えていたはずだった。
なのに、その瞬間。
まったくの無意識に私の目は斜めに動いて……。
30:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:58:31.07 ID:/ZuzgcCF0
跳ねるような歌。
スキップするようなダンス。
まるで小さな女の子が、大好きな友達と一緒に遊んでいるみたいな。
楽しそうに……いや、違う。
「楽しそうに」歌って踊るアイドルはたくさん居る。
31:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 19:59:54.90 ID:/ZuzgcCF0
……その時のこと、全部、覚えてる。
終わった今でも。
この気持ち。
私は、さっきの……。
32:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:06:53.87 ID:/ZuzgcCF0
「あ、あれっ? もしかして、私の勘違いだったかな?
じ、実はあんまり、楽しめてなかったー、とか……?」
それに対し、今度は私が少し慌ててしまう。
そう、私が驚いたのは、そんなことじゃなくて、彼女が私の名前を知っていたこと。
33:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:10:11.86 ID:/ZuzgcCF0
……普通だ。
自分のファンが居ることに嬉しそうに笑う。
トップアイドルだとは思えない、まるで新人アイドルみたいな、「普通」の反応。
でももうその普通さは、私を不快にはしなかった。
34:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:12:19.12 ID:/ZuzgcCF0
そうだ……。
確かに私のプロフィールには、そう書いてある。
今の事務所に入る時に書いたプロフィールだ。
「好きな芸能人」みたいな項目があって、そこに私は彼女の名前を書いたんだ。
それも、確か「!」マークとか、キラキラマーク、ハートマークなんかも加えていた気がする。
35:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:13:54.20 ID:/ZuzgcCF0
全部思い出した。
そうだ、そうだよ。
楽しかったんだ。
レッスンで一緒に踊った時も、さっき一緒に踊った時も。
初めて春香ちゃんの歌を聴いて、ダンスを観た時も!
36:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:17:40.60 ID:/ZuzgcCF0
……そこから先のことは、実はよく覚えてない。
覚えてるのは、その場で泣き出してしまったこと。
そんな私を慌てて慰めてくれた人が居たこと。
その人が手作りのクッキーとメッセージカードを渡してくれたこと。
37:名無しNIPPER[saga]
2020/04/03(金) 20:19:46.69 ID:/ZuzgcCF0
あれからまた、私の持っているライブ映像は増えた。
今も増えてるし、きっとこれからも増える。
友達が遊びに来ると、やっぱり観賞会が始まる。
やっぱり春香ちゃんすごいよね。
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