45:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 23:45:21.55 ID:z07AMiQQO
そんな無駄話をしながら、日菜は銀色の缶ビールのプルタブを引く。カシュッ、と炭酸の抜ける勢いがいい音。その勢いのままグラスにビールを注いで、
「うわぁ、すっごい泡立つ」
白い泡と黄金の液体が半分半分になった。テレビなんかで見るビールとは大きく違った様相だ。日菜は不思議そうに首を傾げている。
「静かに入れないからでしょう」
お酒の席での一杯目はビールがいい、というのは未成年の私でもよく耳にしていた。日菜から缶ビールを受け取って、傾けたグラスにゆっくりと注いでいく。すると、泡が一割、残りがビールという塩梅になった。これも思い描いていた理想のビール像と違って、少しだけ悔しい気持ちになる。
「味は変わらないだろうし、まーいっか」
「……そうね」
日菜の言葉に頷く。それから互いに、ちぐはぐなグラスを手に持った。
「それじゃあ、かんぱーい!」
「ええ、乾杯」
そしてその音頭に合わせてグラスをこちんと合わせる。若干のフライングだけど、大人の仲間入りを果たした気持ちになった。
その気持ちのまま、私たちはビールを飲む。
「……にがっ」
「……苦いわね」
二人して同じ感想を言った。それがちょっとおかしくて笑う。
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