28:名無しNIPPER[sage saga]
2020/03/19(木) 22:52:42.68 ID:z07AMiQQO
彼女の瞳には、紗夜と日菜の間に様々なお花が咲き乱れているような幻覚が映っていた。それはピンク色したスイートピーだったり、紫色したチューリップだったり、イチゴだったり、ミツマタだったり、ゼニアオイだったりした。
それが何を意味するのかはわからなかった。でも、羽沢つぐみの脳内に住むいつもの5割増しにクールな美竹蘭が「3月20日の誕生花だよ。花言葉は……まぁ、たくさんあるから、自分で調べて好きなのを選べばいいんじゃない」とイケボで囁いた。なるほど、つまりそういうことなんだね、蘭ちゃん。
羽沢つぐみは、何か特別で素敵なものを見つけられたような気分になっていた。聖域とはこういうものなんだろうか。目の前にある花園は、なにものにも侵されてはいけない、遠目で見守るべき領域だ。
音の地平線から語り部の声がする。
退廃〈デカダンス〉へと至る幻想。背徳を紡ぎ続ける恋物語〈ロマンス〉。痛みを抱く為に生まれてくる悲しみ。第四の地平線――その楽園の名は『ELYSION』……。
羽沢つぐみは察した。ふたりの間に、自分という存在が介していてはいけない。そうしてしまうと、特別で素敵な何かが色を失ってしまうんだ。
だから、今この場で私が取るべき行動は、クールに去ることだけだ。そうだよね、蘭ちゃん。
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