渋谷凛「春の訪れ、こねて作った薄いもの」
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3: ◆TOYOUsnVr.[saga]
2020/03/16(月) 23:49:44.00 ID:IE5PJN5R0



二枚目のクッキーに手を付ける気になれぬまま、しばしの放心をした私は、意を決してベッドから立ち上がる。
こんな心持ちで食べては、せっかく作ってくれたプロデューサーに申し訳がないからだ。

そうと決まれば、テンションを無理やりにでもあげるために小箱を片手に階下のキッチンへとおりる。

水を火にかけ、戸棚からティーポットと紅茶の茶葉が入った缶を出す。
お湯が沸くまでの間には、食器棚から持ってきたお洒落なお皿をダイニングテーブルへと置き、その上へプロデューサーお手製クッキーを並べていった。


写真映えするように、クッキーを丁寧に並べ終えた頃にちょうどお湯が沸いて、それをティーポットへと移し、紅茶を淹れた。

本当はティーポットをあたためたり、蒸らしたりといった工程を踏む方がおいしいお茶になるのだけれど、今はそれよりも形を早く整えることを優先したかったので、割愛する。

ティーポットに入れたお湯が鮮やかな色に染まったのを見て、カップへと注ぎダイニングテーブルへと運ぶ。

紅茶とクッキーを並べて、写真を撮る。
誰に送るわけでもなければ、どこかへ投稿するわけでもない。
ただの自己満足の記録ではあるけれど、良い具合だ。

ああ、でも。
一人には送っても問題ないか。

そう思って、メッセージアプリを開き、その相手に『ありがとう。おいしかったよ』と添えて、先程の写真を送信した。



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