13:名無しNIPPER[saga]
2020/02/09(日) 02:27:36.01 ID:QhrXPTvL0
いつものように事務室で部室の鍵を借りようとしたら、もう貸したよと言われて、部室に行ってみたら彼女のバッグがあったり。
朝練の前にバランスボールで遊んでいるのを見られたら、その次の日からは彼女が先にトレーニングルームにいたり。
練習後にお互い帰る方向が同じで、のほほんと自転車を漕いでいたら無言でスピードを上げて追い抜いてきたり。
謎だった。かなり。
顔を合わせても話すどころか睨まれるくらいなのに。
同じ部活の同じ種目なのに話すのは月に一度あるかないか、周りからのライバル扱いもこれじゃ仕方ない。
でも一番謎だったのは、負けたときに彼女が笑っていることだった。
普通は勝ってわたしに対して笑うものなのだと思うけど、ちょっと意図的にミスったりしてみたらすんごい顔で睨まれた。
思い出すだけでむず痒い。だけ。つまりさして嫌ではなかったのだ。不思議と。
当時もなんなのーなかよくしようぜぇーとは思いながら、わたしも少しは楽しんでいた。
まったく話さないのに。話しかけようとも思わないのに。
で。で、どうだったっけな。
そんなこんなで、蚊に刺されを気にしたり落ち葉で滑って転んでたりインターバル練習を頑張る彼女を見ていたりしていたら。
次の春には、楽しみがそこまでの楽しみじゃなくなった。
理由はただ一つだけで、彼女がこれまでとペース配分を変えたこと。
わたしと同じ前半に比重をかける走り方から、後半にかける走り方に変えた。
だから、あの走り始めの一瞬に彼女は現れなくなった。
終盤で彼女に抜かれるようになったことよりも、わたしと彼女の間で共有していると思っていた部分がただの幻だったと思い知らされたことが悲しかった。
やりきれない気持ちで最後まで真面目に、ほぼ全てヤケだったけど、必死に走ったら彼女をなんとか抜いた。
当たり前なことに楽しくはなかった。でも、彼女に合っているのがそういう走り方だというのは、近くにいたわたしが一番分かっていた。
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